REIKA YOSHIMOTO
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MyEmbroidery Tanosyu-kai Life


体感刺繍



アキコカンダ先生 私21歳の頃


卒業はしたものの演劇にはあまり興味なく

在学中からイサドラ・ダンカンやニジンスキーに夢中だった私は

迷うことなくダンスの道に。


私の心をとらえたのは
数年前にNYのマーサグラハムカンパニーから帰国されたばかりの

モダンダンサーアキコカンダ先生。

東京中のダンスレッスン教室を見学していく中で、

アキコカンダモダンダンス教室は

レッスンのメソッド、フロアーレッスンのワンツースリーが

すでにドラマ、

ダンサーの動きから生まれるドラマに引き付けられました。




先生はレッスンの合間にいろんなお話しをしてくださいました。

NYでのご体験、ダンサーの事、マーサの言葉・・・

そんな中でも特に印象に残っている、今でも折にふれて思い出すエピソード。


レッスンの合間に珈琲を飲みながら

ふと話されました。


「忘れなさい、覚えなくていいの、忘れていいの

忘れても忘れても、心に残るの

コーヒーがフィルターをとおるみたく

一滴一滴心に沈殿していくの。


その一滴が

あなたの表現になるの。」



中高と受験校で、呪文の様に覚えろ、記憶しろと教えられた私にとって

忘れても良いのだというアキコ先生の言葉は

新鮮で哲学的でとてつもなくカッコよくてそして

何かホッとする響きを持っていました。


ダンスの指導中に放たれたその言葉は

今でも私の心に深く刻まれています。


アキコカンダ先生のもとには3年ほど通いました。

カンパニーのオーディションにも受かり

カンパニー在団中はカンダ先生が

1974年に芸術祭大賞を受賞された「コンシェルジュリ」や 

渋谷ジャンジャンでの 現代音楽を使った 実験的な作品などにも参加しました。


当時はひたすら自身の肉体的可能性に挑戦するのが楽しく、

ロック、ビートルズや邦楽、筝曲、古事記からイメージを得た創作舞踊を振付たり、

寺山修司作品の「アダムとイブ」出演や、蜷川幸雄氏や佐藤信氏演出の

レビューのショウダンサーとしても活動しながら、

憧れのアルビン・エイリーダンスカンパニー(NY)でのダンス修行のために渡米致しました。



しかしケガが続き膝の靭帯損傷などもありダンスは断念しましたが、

今刺繍作品を創作していて、糸にエロティシズムや動き、物語りを感じたり、

制作中にわき上がる身体的衝動に  この時期に教えて頂いた事、

学んだことの全てが起点になっているように感じます。




残念ながら先生は2011年にお亡くなりになられましたが
刺繍を始めて数十年たったころ、思い切ってお手紙を差し上げましたら

あたたかいお返事を下さり
お亡くなりになられる直前まで文通が続きました。

そのお手紙は私の大切な大切な宝物です。



後日談ですが
40数年たった個展会場で
私の作品をご覧になられた方から
「あなたはダンサーだったの」とたずねられたことがあります。


アートは嘘がつけない、すべてが心に沈殿し晒されるのですね。






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